2011年1月12日

泥沼のウェブビデオ方式合戦

恐らくはウェブビデオの方式に関しては短期的には収束しない可能性も高い。そのため依然としてFlashを使用したビデオが長らく使用される時代が続くのではないかと思う。
この問題を解決するためには、それぞれのブラウザがどの方式を対応するかではなく、どの方式が共通で対応できるか、という一点が解決されないと延々と続くことになる。
ちなみに現状手っ取り早い解決策としては次の二つが考えられる。

  • H.264を保有するMPEG-LAが特許権の行使を完全に破棄し、その実装や使用を無料とする。
  • 現在TheoraもしくはWebMに対応していない陣営が、このどちらか、もしくは両方に対応する。

実はどちらも難しい、というのもTheora、WebMに対応していない側というのはほとんどがH.264の特許権の行使に関与している側であるからである。そして、H.264側の歩み寄りなしに、Theora、WebM陣営がH.264に対応するのが難しい。これは大きく分けてその実装がオープンソースのイデオロギーに反するといったものと、デコーダーのライセンス料の支払いが(MPEG-LAが恣意的にそれを変更できるという不確定性も含めて)リスクが高く困難であるというものがある。
この問題が解決するのは最悪、特許権が切れた時点、ということも考えられるかもしれない。もっともこれが解決しなくともビデオがウェブ上で見られなくなる、という話にはならないとは思うが。
おまけ:尚、マイクロソフトのエスペラント語の例えは英語を使用するのにライセンス料の支払いを求められる体系になっているのであれば適切であるものの、そうではないため、例えとしては弱いと思う。

Google ChromeがH.264の対応を打ち切りの予定

現バージョン8ではH.264、Theora、WebMのCodecが内蔵されており、これらの方式のビデオが再生できていたが、オープンな方式をサポートする目的でH.264の対応を打ち切るとGoogleが発表した。このうちTheoraとWebM(Googleが買収したOn2の技術、現在はGoogleが所有し、2010年にオープン方式として公開)は特許料が発生しないオープンなフォーマットとして公開されており、H.264は権利管理会社によりMPEG-LAにより特許料などが管理されている。(尚、非商用の利用に関しては現在のライセンス期間中(5年毎に改定される)は使用料の徴収をしないとの声明が2010年になされている。)
ちなみに対応状況は次の通り。
ブラウザH.264TheoraWebM備考
Google Chrome×H.264のサポートはバージョン8時点で有
Mozilla Firefox×WebMはバージョン4より対応
Safari××WebMには対応しない方針
Internet Explorer××H.264の対応はバージョン9より。ただしシステムにCodecが導入されていれば非対応のものも使用可能
こう見るとオープンソース陣営の側についただけの話なので。Google的には自然な流れかと思う。
オープンな方式を推進するのが目的であれば次はFlashのサポートを無くすべきなのじゃないかなどと意見も出ている。上記のように現在まだ全ブラウザで共通して対応している方式がないこともあり、HTML5のvideoタグは広く使われていないため、今回のGoogleの決定は短期的には現実的なユーザーへの影響はない。影響があるのはHTML5のvideoタグを使用してビデオを再生する場合においてビデオを再生する場合である。それぞれのブラウザの対応するビデオ方式の違いによりウェブの断片化を促すという意見もあるが、前述のようにすでにFirefox陣営とSafariやIEなど、すでに分裂状態にあるためこの判断でGoogleが特別に非難される理由はない。
尚、Flashの同梱とビデオCodecの互換性併せて議論されている部分があるが、ビデオCodecのサポートは異質なものである。なぜならFlashは現状広く使われている技術であるのと同時に、現状HTML5などでカバーされていない部分を補う要素があるのに対して、ビデオ方式はただ単にビデオがどのようにエンコードされているかの違いである。特にブラウザ間でどの方式をサポートするかのコンセンサスが成り立っていない以上、GoogleがWebMを推進することで非難されるのであれば、マイクロソフトとAppleも自身が関与している方式を推進している時点で同罪であり、同じく非難されるべきである。
HTML5ビデオの今後はどのようになるのか興味深いところではあるが、現時点で特に大騒ぎするようなことではないのではないかと思う。